血管外科
Vascular Surgery
主な診療内容
下肢静脈瘤
下肢静脈瘤は、あし(肢)の静脈が太く拡張して、蛇行して浮き出ているものをいいます。静脈瘤の症状には、足がむくむ、だるい、重苦しい、痛む、ほてる、かゆい、こむら返りなどがあります。特に夕方症状が増強するのが一般的です。進行すると、血栓性静脈炎による発赤や腫脹、皮膚炎、皮膚の色素沈着、皮膚の硬化や難治性潰瘍を形成するようになります。見た目では診断が不十分であり、下肢静脈の超音波検査が必要です。静脈瘤による症状がある場合、また弾性ストッキングによる症状の軽減が見られる場合には、下肢静脈瘤に対するレーザー治療も適応になります。
下肢静脈瘤に対するレーザー・高周波治療が保険診療になり11年(2022年現在)が経過しました。また、より低侵襲な下肢静脈瘤に対するシアノアクリレートによる血管閉塞術も2020年12月に保険適応になりました
日帰り下肢静脈瘤レーザー(高周波)治療
レーザーや高周波を用いた血管内治療は、体にやさしく、手術痕の少ない、優れたアイデアによる治療法で、日帰り外来治療が可能です。下肢の表在静脈内にカテーテルを挿入して、レーザーやラジオ波により血管壁を焼灼して、静脈瘤を収縮・閉塞し、消失できます。治療後は下肢静脈瘤による症状が改善します。
2006年から2007年にレーザー治療の国内初の臨床治験がおこなわれ、波長980nmELVeS®レーザー機器が2010年薬事法承認され、2011年1月下肢静脈瘤に対する血管内レーザー焼灼術が保険収載されて、保険診療として施行されるようになりました。その後の使用成績調査でもレーザー治療の有効性と安全性が報告され、現在、「下肢静脈瘤に対する血管内治療のガイドライン」に則って、治療がおこなわれています。2014年には、術後の痛みのない波長1470nmレーザー機器、および高周波機器が薬事承認されました。
これまで、レーザー機器の臨床治験に参加して、学会にも積極的に発表し、下肢静脈瘤治療をおこなってきました。その他の治療法として、硬化療法、静脈瘤切除、静脈抜去術、高位結紮術などがあります。下肢静脈瘤でお悩みの方は、当クリニックにご来院いただきお気軽にご相談ください。
下腿難治性潰瘍に対する治療法
皮膚病変(皮膚炎、硬化、潰瘍)を伴った下肢静脈瘤の重症例に対しては、まず圧迫療法を指導いたします。しかしながら、難治性の場合には、不全穿通枝治療が必要な場合もあります
リンパ浮腫に対する診断と治療
原発性および二次性(子宮がん、乳がん、前立腺がん等の術後)リンパ浮腫に対して、リンパ浮腫複合的理学治療(リンパマッサージ、圧迫療法、運動療法、日常生活指導、スキンケア等)を、外来にて指導いたします。
確定診断のためのリンパ管シンチグラフィは、連携医療機関に紹介して診断しています。弾性ストッキングや多層包帯法による圧迫療法の指導は、外来で予約制でおこなっていますので、必ず電話にてご予約ください。弾性着衣療養費申請をおこなっています。
深部静脈血栓症 / 肺塞栓症(エコノミークラス症候群)の診断と治療
深部静脈血栓症は、下肢の筋肉間を走行している深部静脈内に血栓ができる疾患でエコノミークラス症候群の名称で知られています。深部静脈の血流に乗って血栓が肺動脈に至る肺塞栓症を合併することがあります。従来、抗凝固薬による入院薬物治療が必須の疾患でしたが、新規経口抗凝固薬(NOAC, novel oral anticoagulants)が登場して、外来内服治療も可能になってきました。従来の治療薬ワーファリンと比べて効果発現が速く、食事の影響が少なく(納豆も食べられます)、安定した効果が期待できます。
採血、下肢静脈エコー、CT検査にて診断しますが、下肢の浮腫が高度な場合、呼吸苦や心不全兆候など、症状によって入院治療が必要な場合には専門医療機関に紹介します。
また、静脈血栓後遺症による慢性静脈不全の方には、弾性ストッキングによる圧迫療法を指導いたします。
動脈硬化検診
採血、血管エコー(頚部・腹部・下肢)、ABI・PWV検査を行って、動脈硬化症の早期発見に取り組んでいます。脳MRI検査は、連携医療機関の放射線専門医に紹介して診断をお願いしています。
■ABI(Ankle-Brachial Index)・PWV(PulseWave Velocity)検査
ABIとは、足と腕の血圧の値の比で、下肢の動脈に狭窄や閉塞があると、その値が低下します。その値から下肢血管の狭窄の程度がわかります。
PWVとは、心臓の拍動が動脈を通じて手や足に伝わるまでの速度で、動脈が硬いほどその速度は速くなることから、その値から動脈硬化の程度がわかります。